第74章 心残りの塊たち
猴宮視点
{あの内に入りぃや}
≪あの中に入るより、見るのがいいんだよ≫
{ほうか? 入りそびれただけじゃろ?}
≪そびれたか…≫
カズナリとタノモノが話をしていた。
A「カズも食べない?」
マサキがカズナリに小皿を差し出した。
その姿が『宮様もお食べになりませんか?』朴ノ木(ほうのき)の葉に乗せた食事を差し出す柾吉の姿と重なった。
(やはり 柾吉なのか…)
体がマサキの方に動く。
肩を窄め、ギュッと目をつぶるマサキ。
(柾吉なら、我を拒絶しない!!)
心魂が 違う! と叫ぶ。
(やはり){マーでは、ない!!}
大きくなった感情を隠せず、声を上げ空へ飛びあがる。
≪猴!どこ行く≫
カズナリの叫ぶ声が聞こえたが、その声に返答はできなかった。
青く透き通る空を ただただ 駆け抜けていく。
なのに、我の周りがドンドン黒く染まっていく。
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
その黒に飲み込まれまいと もがく
ああああああああああああああああああああああああああああああああ
『猴宮様』
真っ暗な世界に“声”が聞こえてきた。
あああぁ ああぁ…
『お心をしっかりお持ちください』
聞き覚えのある“声”
あぁ
『どうか…どうか…』
その“声”の方に意識を向けると、透き通る青い空が見えた。
その青い空に白い羽の鳥が飛んでいた。
(羽の民か?)
頬につたう涙に気づく
(見られとうない…こんな姿…誰にもだ…)
近くの雲に降り立ち膝を抱えて座り込む。
(泣くとは…情けない…)
しばらくして山犬が側に降り立ったが、顔を上げれない。
{宮さま…}
鼻で我をつつく山犬。
ゆっくり顔を上げモモの顔を見る。
{全く、世話のかかる}
ふーと息を吐く山犬。
『すまぬな…』
モモの耳が少しだけ傾く。
(困った顔をしおって…)
『ソチまで、そのような顔をされたら、我に非があるとしか思えぬ』