第74章 心残りの塊たち
モモ視点
{マーでは、ない!!}
宮様の感情的な声が耳を刺した。
瞑っていた目をあけ、声の方を見る。
空に駆け上がる光の筋。
≪猴!どこ行く≫
ニノの声もする。
⦅モモ!宮様の所に走れ!!⦆
大きな口をあけ指示を飛ばすボス。
{承知した}
後ろ足で地を蹴り、光の筋を追う。
四つ足下の空間を硬化させ、足場にし 猴宮の匂いを探す。
匂いをたどって、小さな雲の上で膝を抱いて座っている小さい塊を見つけた。
{宮、さま…}
小さい塊に 鼻でそっと触れる。
麻布の水干(すいかん)を纏った塊がゆっくり動き出す
{全く、世話のかかる}
(最近癇癪(かんしゃく)がひどくなった)
ふーと息を吐く。
『すまぬな…』
小さい声で聞こえた。
(いま なんと?)
傲慢な態度を取り続ける猴宮から『詫びの言葉』を聞き驚いて、宮を直視する。
今にも泣きそうな顔は、明らかに出会った頃より、幼くなっている事に衝撃を受ける。
(隠れ…が、近いのかぁ)
『ソチまで、そのような顔をされたら、我に非があるとしか思えぬ』
宮様が困った顔をしている。
{いた!いた!!!!}
猿のお嬢の甲高い声が聞こえてきた。
お嬢が真っ白い鳥に乗って俺たちの所に着た。
{和寿様!! 和也さまが心配されてましたよぉ}
お嬢が宮の諱(いみな)を呼び鳥からピョンと地に降りた。
地に足がつく頃には猿の姿から、小袖を着た乙女の姿になり流れるように『しっかりなされませ』と宮に声をかけていた。
(お嬢って…俺より上位‥‥)
宮『お菊か…どうも、最近 心魂が定まらないのだ』
弱々しく項垂れる宮様。
菊『今宵は 槿(ムクゲ)の花で和也様を祝福されるのでしょ?』
お嬢…“お菊さま”がしゃがみ、宮様を手を取る。
宮『そう…そうで あった…』
ゆっくり立ち上がる宮様。
菊『よろしいです♡
では、和寿様の御召し物もお着換えしましょうね♪』
小さき霊達が替えの衣を持ってくる。
宮『いや この姿でよい…』
今着ている衣のシワを器用に伸ばしている。
(女性にそうゆうの、通用しないってボスが言ってたような…)
お菊様の纏うオーラの色が変わった。
(しーらなーぃ)