第74章 心残りの塊たち
お嬢視点
宴が始まり、和也様がお乗りになっていた雲の上から体を揺らしながら見ていた。
私が、主様のご寵愛を受ける和寿様のお付きとなったのは、もう ずいぶん昔のこと……
いく度も 輪廻の理を拒絶し、和也様まで自我を保たれている和寿様。
私的には、主様の身元に座(ざ)するのは 和寿様のご意志でのぼられて欲しい
今世は本当に和寿様のご機嫌がよい。
本当に嬉しい 私の大好きなお二人が笑っておられることが
{マーでは、ない!!}
和寿様の感情的な声が耳を刺した。
{えーーーなに????}
慌てて声の方を見る。
空に駆け上がる光の筋。
≪猴!どこ行く≫
和也様の声が響く。
M『モモ!宮様の所に走れ!!』
潤さまが大きな口をあけ モモに指示を飛ばす。
モモ{承知した}
後ろ足で地を蹴り、光の筋を追うように飛び上がるモモ。
(私も…って、この姿では、和寿さまの駆け抜けについて行けない… ああ 見えなくなった)
主様の御髪の一本でしかない私は小者。
この姿とて、雅紀さまのリスザルの容姿を写しただけ…
鳥『乗りなされ…』
白い鳥が目の前に現れた。
{え?いいのですか?}
小者が上位の聖獣の背に乗るなど、有りえない。
鳥『同じ喜びと憂いを共有する者ではないか 何を案ずる?』
{では、あなた様は 雅紀様の?}
鳥『ふふ そうですよ さ、背中にお乗りください』
白い鳥が背中を向けてきた。
{それでは、私にお力をお貸しください}
スルスルっと鳥の背に乗せてもらった。
先に飛んだ狼のモモの残り香で、大体の場所を見立てて、飛んで行く。
小さな雲の上に、モモが立っていた。
{いた!いた!!!!}
鳥『あの雲に降り立ったらよいのだな?』
{はい お願いします}
モモの側まで近づくと足元に膝を抱いて座っている黒くすすけた塊があった。
(なんと、お心のケガレが溢れてしまったのぉ)
{和寿様!! 和也さまが心配されてましたよぉ}
ピョンと地に飛び降りる。
地に足がつく頃には、御付きの頃の姿になる。
『しっかりなされませ』
優しく和寿さまに声をかけていた。