第57章 自分を自分で 前半
大野視点
雲に乗ったメンバーが、そのまま昼間の自分の側に向かう。
おいらは 自分に近づけない
なにも だれも 言われてないけど わかる
俺は‘俺’に近づいてはいけない
だから 少しみんなより上で 見ている。
歩く‘俺たち’に沢山の小さな精霊たちが集まって体に巻き付く布になっていく。
(ふふ おいらドウテイだと思ってたけど、あれは天の羽衣だな 浮いてきたし)
夫婦岩のように並んでいる大きな2つの岩辺りで‘俺たち’の足元が浮きはじめる。
{ Welcome }
咲いている花たちが揺れながら歓迎を告げる。
翔くんが微笑みながら手を軽く降ると、花たちは嬉しそうに揺れる。
(ふふ 翔くんかっこいい
やっぱり 花たちは翔くんを歓迎していたんだね)
両脇に左右対称18個ずつの岩を並ぶ 参道を進む‘俺たち’
その岩の上には、それぞれの魂(マナ)が様々な色を放ちたながら‘俺たち’を見ているだけで、何も行動しない。
(チーフが言った『許可』っていうのは立ち入りの許可だったんだな…
本来ならココでメレ・カヘア(mele kahea)をしないと…)
一つの魂が俺の前にスライドしてきた。
{汝 名は}
魂(マナ)から声がする。
(俺には必要か…ふっ だよな)
額をそっと触って≪大野智≫と堂々と答えた。
{生まれは}
≪日本 東京の三鷹≫
{ココは どのような場所か分かっておるのか?}
≪聖地クカニロコ ハワイの大地の精霊の地 俺たち嵐が生まれた場所≫
周りの魂(マナ)の輝きが変わる。
(間違っていないぞ)
周りを目だけで確認する。
新たな魂(マナ)が俺の前にスライドしてきた。
{汝は 人か}
その質問には、明らかな戦意的な意味が見える。
今の俺はそれなりに力を使える。
攻撃してきたら、それなりに反撃もできる。
でも、俺は≪人だ 人として生きる≫と迷うことなく、言葉を出す。
(そうだ おいらは『人』としてみんなと生きるって決めたんだ)
{そうか…そなたは選んだのだな 険しき道であろうにぃ…}
{人の子 大野智 非礼詫びる}
周りの魂(マナ)から戦意的な感情が消えて行く。