第55章 虹の上から 見る
二宮視点
手を引かれたような気がして視線を向けると、翔さんが少し怖い目で俺を見ている。
(ヤバっ…最も面倒な方のご機嫌を損ねそうだ…)
さりげない感じでマー君の肩に寄りかかって、様子を横目で確認すると、大野さんが翔さん見てくれる。
(あの方の機嫌はアナタしか拭えないかも…)
大野さんを見つめているマー君に聞こえるように「あの二人ってさ」っと声をかける。
「自分たちより上位からの命令ぃ?
いや… 違うなぁ…
勧め?みたいなモノがないと、この先 動けない(気がする…)」
マー君の肩に体重をかけながら 独り言のように言う。
「だから 俺たちだけでも『先に進めてもいい』って意思表示してあげないと(猴の願いもあるし…俺自体もそう願うし)ね(思うでしょ?)」
マー君の返事を待つ。
A「でもさ…」
マー君が静かな口調で呟く。
「『でもさ』って何?」
聞き返したのに マーくんの返事の続きは無く 感情を下降していく。
(いつもなら ヘラっとした顔で同意してくれるのに…俺たちは…先を望んじゃダメなのか…それとも)
「マー君は先に進みたくないの?」
ちゃんと聞こえるように言う。
マー君がちゃんと俺の顔を見てくれ、みるみる慌て出す。
A「先に進みたいっていうより この幸せが続くなら、続けたいね」
あわあわしながら言葉を絞り出しているマー君。
(ちゃんと聞いてなかったんだねーちょっと…ほっとした…)
S「あ!!」
翔さんがいきなり大きな声を上げる。
「なに!」
慌てて体の軸を戻して翔さんの方を向く。
マー君も同じタイミングで叫ぶ。
O「翔くん!下みちゃダメ!」
慌てた声の大野さんが翔さんの顔に手を持っている。
(なに?下に何があるの…)
赤い大地に伸びる真っ直ぐの道に、止まっている車から降りる人の姿が見える。
(あ…俺だ…)
M「あぁホントだ!俺がいる!」
潤くんも確認できたようだ。
クカニロコに到着したばかりの、疑心暗鬼がまざまざと見て取れる。
(時間軸が違う?
そうか ここは空間の狭間のかぁ
そうだよな
俺たちの中庭から、こんな風に歩いて出たの初めてだし)