第41章 秘密の中庭 マシラと大野と松本
猴の宮(理解者)視点
カズナリが、我から離れていく
槿の花が少し色を薄める。
『さぁ、サトシが眠っている間に、語ろではないか…御仁よ』
すやすやと気持ちよさそうに眠るサトシの側に立つ。
『起きぬか?良い知らせがあるぞ!!』
この場所でしか、触れることのできぬサトシの体をそっと触る。
(温かい…赤子のようだ…)
『御仁…御仁…』
サトシではなく、御仁を呼ぶ。
『起きぬか…よぉし…』
意識を集中して『御仁!』と呼んだ。
O「ひゃぁい」
飛び起きるサトシ。
(起きた♪)
体を起こして、回りを確認しているサトシを見下ろす。
O「へ…ぁ……」
寝ぼけているサトシ
『なにその、間の抜けた声をだすのです?』
(めんばぁより)
『先に御仁と話をしようと思ってたのにぃ』
(サトシが起きたから、御仁は表に来ないな…)
左裾から一枚の風呂敷をだし、側の切石の上に広げる。
その上に座って、サトシに顔を向ける。
O「えーっと?もしかして、ニノと一緒にいる宮様?」
オズオズしながら聞いてくるサトシ。
『そうだよ?
こうやって面と向かって話すの初めてじゃ無いでしょ?』
大野の顔に扇子を向ける。
大野の眉が下がる。
『振り出しですか?まーいいですけど…』
(いつものことですし…サトシ…ですし…
サトシには、御仁のような聡明さが足りぬ
だが…その緩さが〝嵐〟の芯であるのは、認めざるを得ない
だが!)
『今日はね♪良いことがあるよ♪』
(今宵は、御仁も出てこれるはず…)
O「え?なに?」
『桃木がね♪ショウと接触できる…と言うか、もうすぐ来る♪』
O「え?桃木ニ会エル?」
サトシの表情と発した言葉がチグハグしている
(あ…一瞬 御仁が出てきた♪)
『ええ♪ ですから…もう少しです』
扉が開く音が聞こえてきた。
『噂をしたら』(待ち人がくるのです)
少し離れた所で開いた扉から出てくる人影は、スタスタ歩いて来た。
M「あれ?」
山犬の坊主が首を傾げる。
『な~んだ 犬かよ!』
(せっかく、喜ばしい光景を拝めると思うていたのに…)
坊主を睨みつけ落胆する。
M「オイ!ももは犬じゃねぇ。狼だ!」
坊主が眉を吊り上げてズカズカ詰め寄って来る。
『我にとったら、山犬にしかないのですよ』
サトシの後に隠れる。