第40章 秘密の中庭 ニノとマシラ
猴宮(理解者)視点
カズナリが戸をくぐって来るのを待っていた。
ここは、ショウが我らの為に今世(いまよ)の造園技法で整えてくれた“中庭”
東屋と呼ぶ屋敷に真っ直ぐ進むカズナリの頭上をフワフワついて行く。
N「一番乗りだな♪」
ご機嫌なカズナリが定位置に座って周りを見回しいる。
『カズナリ♪』声をかけると「猴?」と驚いだ顔で見上げるカズナリ。
(いつかまた、あの笑顔が見たいのう…)
『うむ』
笑顔をカズナリに送る。
N「あのさ…」
カズナリが何か言いたそうな顔をしている。
(待つは疲れる…)
『今宵は!個々で楽しまぬか♪』
N「は?なに言ってんだよ。お前はここにいろよ」
カズナリが長椅子をバンと一回叩く。
(何を言うておる?)
『今宵の宴に 我も招待されておる』
胸元から小さい白い花が咲いた枝を出す。
(美しき槿(むくげ)の白き花…そなたの花になるはずだった…)
N「花?いつもらったんだよ!」
カズナリが我の花を取りに近づく。
(忘れてしもうたか…この花は約束の花であったではないか)
長い袖を手で掴み、地に足を着ける。
『いつでも良いでは、ないか…』
枝を袴の紐にさす。
『カズナリは、めんばぁと共に花の祝福を貰えばよい。我は、言葉を重ねたい者がある…』
目を閉じ、胸の前に両手を重ねている。
(そなたの選んだ道で、我も桃も魂を保てている)
N「でも… 俺の側から離れると…姿が…」
心配してくれている声のカズナリ。
『心配いらぬ!!今宵の宴の主催から授かった花が有れば、我が姿ゆるぎない!!』
精一杯胸を張ってお道化てみせた。
N「どこから、その自信が出るんだよ!」
心配と逆に呆れ顔をするカズナリ。
カズナリは、頭の良い男。
よく人の話を聞き、その意図を読み解き 行動を取れる。
なにより 察する心を持っている。
そして、言葉をよく知っている。
しかし、学のないモノに、カズナリの言葉は通じぬ
カズナリの優しさは、ねじ曲がっていき、周りとの溝や壁はおおきくなった…
我々“理解者”はカズナリが求めてくるモノを用意しただけ。
自ら考え、行動し、決断したのは其方だ。
胸を張れ、カズナリ
ありのままを受け入れてくれる“めんばぁ”を得たのは、己の行いの褒美だ。