第40章 秘密の中庭 ニノとマシラ
二宮視点
扉を一人でくぐると陽が燦々と降り注ぐ“中庭”に出る。
ここは俺たちの…魂の欠片を保有する者が交差できる空間。
手入れされた庭木に噴水。
(この中庭のプロデュースしたのは、翔ちゃんなんだよねぇ)
品の良い石畳の脇にあるいい香りのする、四季折々の咲き誇る花々を抜けて、俺たちの東屋(あずまや)に続いて行く。
東屋に着いた。
「一番乗りだな♪」
自分の定位置に座る。
周りを見回していると『カズナリ♪』と少年が俺の名前を呼び捨てして近づいて来た。
「ま、猴(ましら)?」
声で判断した。
『うむ、我だ』
笑顔の少年。
「その姿…」
(どう見ても…水干(すいかん)だよな…)
水干とは、平安時代の男子が着る子供服。
(それを着こなしいるって…)
理解者のなかで、一番強い力を持つ、感受性の豊な個体 猴(ましら)
宮『今宵は“花の宴”に招待されたのう』
フワフワと浮いている猴。
(言葉使いも、いつもと違う…)
「あのさ…」
(こんなに舞い上がってたら…要らんこと言いそうだ…釘を刺さないと…)
宮『今宵は!個々で楽しまぬか♪』
眩しいくらいの笑顔で提案いてくる猴。
「は?なに言ってんだよ。お前はここにいろよ」
自分が座っている長椅子をバンと一回叩く。
俺の行動に少しも反応しない猴。
それ所か『今宵の宴に 我も招待されておる』と言って、胸元から小さい白い花が咲いた枝を出す。
「花?いつもらったんだよ!」
持ってる花を確認するつもりで、猴に近づく。
猴は長い袖を手で掴んで、地に足を着ける。
宮『いつでも良いでは、ないか…』
猴は、枝を袴の紐にさしている。
(見た感じ…ハイビスカスに似ている…)
宮『カズナリは、めんばぁと共に花の祝福を貰えばよい。我は、言葉を重ねたい者がある…』
猴が目を閉じ、胸の前に両手を重ねている。
「でも…
(お前は俺で、俺はお前なんだろぉ)
俺の側から離れると…姿が…」
宮『心配いらぬ!!今宵の宴の主催から授かった花が有れば、我が姿ゆるぎない!!』
胸を張る猴。
「どこから、その自信が出るんだよ!」
呆れる俺。