第40章 秘密の中庭　ニノとマシラ

二宮視点

呆れながらも猴の『言葉を重ねたい者』について一応確認しておくことにした。


「話したいのは御仁(おに)殿ですか？」

宮『そうじゃ。もうすぐ　来るであろう！』
　ふふふっと笑った口元を扇子で隠す猴。

（猴…お前本当に御仁殿の話をする時、良い顔するよな…）

大野智の守護神“御仁”
本当の名前では無いけど、猴がそう呼ぶから、俺もそう呼ぶ。

宮『それに、今日は“御仁”の他にも会えるからのう』
　扇子で表情を隠している猴。

（隠れてないし、駄々漏れ　あーその顔の時には、こっちがどんなに言っても、動かないパターンですね…）

「分かった。時間を作るよ。

　でも、少しだけですよ
“御仁”殿の力は弱っています。無理させたくない」


　ボフン
話をしていると、いきなり、大きな音が聞こえてきた。


「わ！！」
いきなりすぎて、肩をビクつかせ、声まで上げた。


慌てて、口を押えて場所を確認する。
（あそこは…いつも智さんが座っている場所…）


宮『来た来た！』
　いそいそと嬉しそうに飛んでいく猴。


（ここは俺らの場所…攻撃は来ないはず…）

恐る恐る近づくと、椅子の上に丸くなって眠っている智さんがいた。

「びっくり…した…なんで、この人は、驚くような登場をする…」
大きくため息をする。

（こっちに来てまで、寝るって…どんだけ寝不足なんだよ…）


「おじさん。起きなよ！」
智さんを起こそうと、手を伸ばす。



宮『我がする！』
　猴が俺と智さんの間に入る。

宮『サトシを起こすのは、我がする』
　ものすごく必死な顔の猴。

（なにかあるのか…

　理解者は嘘は言わない。
　何か意味があるんだろう…）

「起こしたいのなら、起こせよ。結構手ごわいぞ」

小さく丸くなっている智さんを指さす。


宮『策は、ある。　カズナリはマサキを迎えに行くといい！』
　ニヤリと笑う猴。

「はぁ？なんでマー君を迎えに行く必要があるんだよ」

（今日は俺の手引きは、必要ないはずぅ…
　さすがに迷子にはならないと思うけど…

　でもなぁ　マー君だしなぁ）

宮『ふふ、面白い男だ』
　扇子を閉じたり開いたりして、ニヤニヤしている。