第38章 器に休息を 相葉と松本
松本視点
相葉くんが部屋の扉の前に帰ってきたは、匂いで分かる。
タイミングを見て「おかえり」っと笑顔で、相葉くんを相葉くんの部屋の扉を開けて迎える。
A「え?」
廊下で、口を半開きにして、行き場無くなった手がちょっと動かして立っている。
(んふっ良い顔してる)
A「潤…ちゃん…が?」
「入れよぉ。自分の部屋だろ?」
親指を立てる。
A「あ…うん、ありがとう」
頭をかきながら、相葉くんが部屋に入ってきた。
「ドアが勝手に空いてビックリしたか?」
A「うん。なんで、待っててくれたの?」
不思議そうな顔で俺を見ている。
「いないと、部屋に入れないだろ?」
刺さったままのカードを指差す。
A「あ、カード…」
「ね?」
A「潤ちゃんがいないと、部屋に入れなくなってたね?」
「フロア内遭難してたね」
A「そうだね。ありがとう」
ほんのりお酒が残っている顔で笑う相葉くん。
相葉くんがソファーの方に歩いて行く。
俺は洗い物を片づけるつもりで、キッチンに入る。
A「ねー?翔ちゃんたちは?」
相葉くんが走って戻ってきた。
「もう、部屋帰ったよ」
A「そうなんだ…」
つまらなそうな顔をする相葉くん。
「まだ飲み足らない?」
氷バケツの中たらビールを一本出す。
A「あービールはもういい…」
「そう?じゃ…こっちどうぞ!」
相葉くんに日本から持ってきた水を渡す。
A「冷えてる!ありがとう」
ペットボトルの蓋を回して、勢いよく口に流し込みながら荷物の方に進む。
「迎えに来なくて、大丈夫?」
キッチンから相葉くんに質問してみた。
A「うん。さっき、カズにも言ったけど、今日は独りで行ける…」
「そうだな…ちゃんと準備してから、ベッドで寝てるんだぞ!」
ちょっとふざけ声で、相葉くんの反応を見る。
A「分かってるって!ちゃんと布団で寝るよ!!」
キチンとした返事が返ってきた。
(あれ、落ち着いてるね…もっとテンパるかなって思ったけど…)
キッチンから見える相葉くんの背中が少しふくらんでいるのに気づく。
(もう、飛べそうだね…)
「じゃ、俺も部屋に帰るよ」
キッチンから手を拭きながら、出てくる俺。
A「うん。ありがとう、また後でね」