第38章 器に休息を 相葉と松本
使った皿をせっせとスポンジで洗う。
使ったグラスは食洗機が洗っている。
(何かしていないと『寂しさ』に押し潰されそうになる…
最近…よく感じるようになった『寂しさ』
いつからか、わからない
なにか原因も曖昧で…自分でもわかっていない…
別に、誰かに会いたくなれば、会いに行けばいい
なのに…
五人で仕事した時の 後…
家に帰れば… この感じが… ……)
皿を持ったまま動けなくなった。
{ボス…}
いきなり顔をペロッと嘗められた。
「や、やめろよ」
なめられた場所を押さえる。
なめてきた動物が、俺の躰を真っ直ぐの毛で包み込む。
「もも…」
包み込まれた温かさを味わう。
「お前に心配されるようなくらい、俺は寂しそうか?」
{いいえ……}
フワフワの大きな尾が頬を触っていく。
この動物は俺の霊獣『大口真神』(おおくちのまがみ)御神犬とも呼ばれる。
簡単に言えば犬神だ
で、こいつが俺の相棒 “もも”
(始めは豆芝くらいの小さい犬だったのに…)
両手の中でクークー寝ていたサイズを思い出して笑う。
「それにしても…でっかくなったな…」
今じゃ、あり得ない位デカイ“狼”に成長した。
{俺の大きさは、ボスの霊力の反映ですよ}
「ふーん。そうかねぇ…」
“もも”の言葉で気分が高揚するのが分かる。
(俺って単純だな)
持っていた皿をきちんと洗い直して、次の皿に手を伸ばす。
(寂しさを感じ始めてきっかけを
強いて、あげるなら…
俺たちの立ち位地が安定したこと…
メンバーそれぞれの道を切り開いている…
じゃ…俺は…なにがある?
ビデオに翔くんを見つけた時のように
もう、直球で行動ができなくなった…
大人になったんだな…まわりの反応が…怖い…)
「俺も、かなりのへたれだなぁ…」
ふーっと長いため息をする。
フワッと、優しい匂いがしてきた。
スンスン……
「相葉くんの匂い…だ もう帰ってきたの?」
濯いでいた皿をシンクに置いて、手を洗う。
(忘れ物か?)
{ボス…俺は寝床で待つ}
「うん。」
モモの気配が無くなる。