第37章 心 同じ 器 すれ違う
大野視点
(離したくないよ…もう離したくないよ…)
訳なんかない、今ここにいる翔くんを離したくない。
S「智くん…」
翔くんの声が近くなる。
見上げていた翔くんの顔が同じ高さで見える。
S「すぐに宴に行けるから…」
翔くんが優しい声。
(もっといっしょ…)
S「ね? 離して?」
翔くんの手が少し震えている。
(僕が…まだ…コワイ?
ダメなのかなぁ
でもぉ………
おいらは…… キミがいい…)
「宴は、一緒に居てくれる?」
S「うん。一緒に居るよ!」
泣き出しそうな声で答える翔くん。
「わかった…」
(これ以上、翔くんを求めちゃイケない…君を傷つけちゃイケない…)
捕まえれていた手の力を緩める。
翔くんの暖かい手がゆっくり離れていく。
(寂しい……早く迎えに来て!
…翔くんと……皆と…一緒に…… … … …… … … …)
目を閉じ、迎えが来るのを願った。
‘輝く扉’が現れる
{お迎えに参りました}
その扉から聖服を着た使者が現れた。
大野、布団から出ようとしない。
{大野様?}
使者が体の側までくる。
大野の額の目がギョロッと開く。
≪kono utuwa no seisintai nemuri ni otita omae tati de hakobe≫
(この器の精神体 眠りに落ちた…お前たちで運べ)
額目の目はギョロッと動いて閉じた。
{かしこまりました}
使者は大きく頭を下げ、大野の回りを数回回り、精神体だけを浮遊させる。
{開門!}
ゆっくり、扉が開く。
門の内側で、頭を下げる霊たち
使者は、スーッと寝ている大野の精神体を誘導しながら、入っていった。