第37章 心 同じ 器 すれ違う
櫻井視点
呼ばれて、走っていくと、智くんがニコニコ笑って、立っていた。
「いやーお待たせしました」
O「ううん。一緒に行こう」
ほんのりピンクになった智くんが動き出す。
少し猫背になっているけど、お酒が入っているけど、足取りはしっかりしている。
(智くんって、お酒に足を取られないね…)
O「さー♬お部屋にどうぞ♪」
手を広げて、クイクイ腕を動かす智くん。
「もー、そんなことしないでよぉ」
O「ふふふぅ~」
背中に触れるか触れないかの距離に智くんの気配を感じながら部屋に入って行く。
(手招きされて、部屋に入るって… なんか、懐かしい♪)
智くんがスイッチにカードを差し込むとフットライトが床を照らす。
智くんは俺の横をフワフワしながらも通り過ぎて行く。
(あの時は…姫に睨まれて、怖かったから…
『みなさんがご想像している関係では…』って言ったけど、ちょっと、嬉しい俺がいたんだよなぁ)
智くんがソファーに座ったのを確認して、メインライトを入れる。
(消した『俺』がまたつける♬)
スイッチを触っただけで、顔が緩む。
(は! こんな顔…見られたくない!)
智くんに見られないように、そっと顔を叩く。
(ニノが見てたらネタにされるだけだもんね…
そうだ。
ニノができない事を『俺』がしましょぉ♪)
O「ねー?
ちょっとこっち来てよぉ~
翔ちゃん~話をしようよぉ~」
ソファをバンバン叩いている智くん。
「先に準備するから…智くんはそこに居て!!」
(あなたの荷物を誰の許可も配慮もいらないで、触れるんだよ…)
O「はーい♬お願いしまーす♪」
ふふっと笑う声を上げながらソファーに沈み込んでいく智くん。
(まったく、あなたという人は…どんだけキュート極めるわけ?
初めて会ったあのギラギラした輝きは、ドコに行ったのだろう?
でも…
はじめから、あったのかも
人を引き付ける 不思議な魅力
まー 俺も、もれなくソレに魅入られた一人だけど…)
「替えのTシャツと下着はこの袋ね?
靴下はどれにするの?移動はサンダルでしょ?」
智くんの方に体を向けると、ボーっと焦点のない目している。
(あ…寝そうだ… そんな所で寝ないでよ)