第35章 天邪鬼の器に休息を
相葉視点
N「ちょっと、聞いてる?」
布団の中からカズの声が聞こえる。
「え?なに?」
(ごめん…聞いてなかった…)
N「だから、迎えの扉の前では、声出したら…ダメだよ…」
カズがうわ言のように、俺に話しかけてきている。
「へーそうなんだ」
N「そのぉ、反応が心配だよぉ」
布団の中に顔を隠すカズ
(大丈夫だよ…そんなに心配しなくても…)
そっと髪の毛を触る。
布団の隙間からカズの目が見える。
ゆっくり瞬きしている。
(カズ……眠いよね……心配しなく大丈夫)
「分かってるから…もう、寝なよ…」
ゆっくり、ゆっくりカズの髪の毛を撫ぜる。
N「うん……」
カズの目がゆっくり閉じて行く。
しばらく、髪の毛を撫ぜ続ける。
(ねむった?)
そっと確認する。
布団から少し出ている顔に耳を近づけるとカズの規則的な寝息が聞こえる。
(眠たね…)
さっきまでの天邪鬼や毒ついたカズはもういない。
(中学生の頃から一緒の掛け替えのない親友…)
容姿が殆ど変わらない、いつまでも若い二宮和也。
「和也」
(この呼び方をすると、いつも、怒るんだよなぁ…)
「大ちゃんや翔ちゃんは良くて、俺はどうして、ダメなのさ?」
カズの頬をつつく。
(柔らかい…
無防備なカズをこんなで間近で顔…触ったのいつぶりだろう)
『送り狼…』松潤の言葉を思い出す。
(狼か…俺…松潤じゃねーから、そんなことできない…
でも…こんなチャンスもうないかも…)
カズの口が『バカ…』と動いた気がした。
(…はい。自覚してます…)
「おやすみ」
カズの額にキスをした。
N「……っ」
カズがピクッと動く。
(わ!やば!!!)
急いで、カズから離れる。
(逃げよう!!)
ニノの部屋の電気を消す。
(大丈夫だね?)
ドアを持ったまま、暗くなった部屋の音を聞く。
(起きてこないな…部屋に帰ろう…)
ドアの閉まる音が出ないように、そっと扉を閉めた。