第3章 それぞれ歩幅を…
櫻井視点
車内の窓カーテンを開いて外を見る。
少し外が暗い。
ガラスにはウルトラ・スモークあたりを使っているんだろう。
外にいる人たちは、こちらが見ていても気づいていない。
不意に『…うちゃん』っと呼ぶ智くんの声が聞こえた。
外から、車の中に意識を戻すと、
A「大ちゃん?どうしたの!」
雅紀の慌てた声が聞こえてきた。
(なに!!)
状況がつかめず、雅紀をみる。
A「寝てるんだね。大ちゃん?起きて!」
顔色がどんどん悪くなる雅紀。
智くんがシートベルトをしたままぐったりしている。
A「起きてよ!!」
智くんの体を揺さぶりながら大声で叫んだ雅紀。
O「う~~ん?雅紀?」
智くんが青白い顔で、雅紀を見ている。
(智くん…)
ホッとした。
と同時に、すぐに対応したのが相葉くんで、俺じゃなかった。
ことを後悔する。
N「あーー寝ぼけてマース」
M「さすが、大物!!」
ワザとらしい位の声で言うニノと潤。
O「あれ?おいら、いつの間に寝たの?」
椅子にきちんと座り直している智くん。
M「翔さんが車に乗って、すぐ?水貰ってたよね?」
N「おぼえてますか?」
三人が智くんを囲んでいる。
O「なんとなく…」
体とシートの間にあったペットボトルを出して見ている。
(俺が真剣に物事を考えた人に必ず、横から水をかけられる。
今も、もしかしてされているの?
どうして…大好きな人に…これ以上…攻撃されたら…)
O「翔くん?…どうしたの?寝てる間に何かあった?」
動けなくなった俺に、心配顔で覗き込む智くん。
心の中まで見えてしまいそうな透き通る目で見られると、
今にも、感情を吐き出しそうになる。
(!!ダメだ!しっかりしろ!櫻井翔!)
「大野さん。チーフが来てほしい所があるそうです」
要件だけを言う俺。