第32章 兄を 兄に 弟が 弟の
S「潤はニノにどういう意味でその言葉を使ったの?」
翔さんが俺の言葉を確認している。
「(えーっと)ニノがさ…自分で自分を『かわいい』って言うから…
自意識過剰じゃね?っていったら」
A「だから、それを言うなら自信過剰だって…」
相葉くんが俺の言葉に被せてきた。
(いま…俺が翔さんと話しているのに、かぶせてこないでよ!)
はーっと豪快に息を出す翔さんの声が聞こえてきた。
(ため息?)
翔くんの方を向くとキッと目に力を入れて俺を見ていた。
S「いいか、潤」
低い声の翔くん。
「あ、はい。」
(ヤバ…言葉間違えたかぁ)
S「いい機会だから座って」
翔さんがにこやかな顔で床を指さす。
(その笑顔…コワイ…)
ソファーの下に座る。
S「まず、潤が言った『自意識過剰』って言うのは『自意識』が『過剰』になっているって事!」
(うん。そのつもりで言った)
S「その意味は、自分の外見や行動などが『他人からどう思われているか』などに、必要以上に注意をはらっている傾向がある事」
(ん ん? 思っていた意味と違う?)
S「ひどくなると、対人関係のあらゆることが自分と関係しているような錯覚に陥り、
相手の態度がすべて自分への反応であるかのような思い込みが生じる。
『誰かが自分の悪口を言っている気がする』って考え込んで『対人恐怖症』や『うつ病』という心の病になるかもってヤツだよ?」
翔さんが語尾が上がって、質問してきた。
(違う…)
「そんな意味で言ってない…」
S「うん。分かってる」
翔さんの声が優しい。
S「俺が思うに、潤が言いたいのは、自信がありすぎって事だよね?
それは雅紀が言った『自信過剰』の方だよ」
(翔さんは、俺の言いたい事を分かったうえで、説明してくれたんだね)
A「だから、言ったじゃん」
大きな顔をする相葉くん。
(それに比べて、何だよ。その勝ち誇った顔は…ニノと喧嘩しても、助けてやんないぞ!)
N「私がうぬぼれてるって事ですか?」
背中側からカズの怒った声がする。
(ほら…)
A「俺は、潤ちゃんの言葉について、言っただけで…」
あたふたしながらニノにすり寄る相葉くん。
(助けてあげないんだから!!)