第30章 お兄ちゃんが
櫻井視点
N「私がうぬぼれてるって事ですか?」
ソファーに座っている和也が拗ねたような怒ったような顔で言う。
A「俺は、潤ちゃんの言葉について、言っただけで…」
直ぐに、弁解をする雅紀。
N「へー、でもよく。Jの言葉に直ぐ反応できたね?
心のどっかで、思っているんだろぉ…」
プイッと顔を背け、目を閉じ頭や顎を揺らしている和也。
A「カズは肌だって…白くて… …… 」
あたふたしながら言葉を絞り出す雅紀。
(もう 遅いよ。お酒も入っているから、長くなるぞ…
雅紀にも言葉の意味を伝えないとなぁ)
状況の緩和を考え始めると、俺と対角線上で、椅子を跨いで座っていた智くんがおもむろに立ち上がった。
O「心配するな!和也は可愛いぞ!!」
智くんはソッポを向いた和也の頬を両手で押さえ、口を今以上に突き出させた。
いわゆるタコ口ってヤツだ。
(智くん やってる本人が笑ってどうするのよぉ)
N「…や…やめでぐだざいよぉ…」
口から絞り出した声で言う和也。
O「和也。そんなに怒らな~い
和也が『かわいい』のは、みんな知ってる。自信もっていいよ♡」
破壊力抜群の笑顔を和也に向ける智くん。
「そうそう。和也は可愛いよ♡」(すねない。すねなーい)
正面から和也の頭を撫ぜる。
「和也が和也の能力や価値などを分かって周囲と区別された自分についての意識を持ってる“自己意識が高い”って言いたかったんだよ。
ね。雅紀」
チャンスを生かして、和也への宥(なだ)めと雅紀への言葉の助け船を一緒に出した。
A「う。うん!!
そう言いたかったの!!自己意識が高いねって!!」
大きく頷く雅紀。
N「じゅうざんがぞう言うなら、ぞう言う事にしてあげまず…」
膨れた頬のままで、何回も頷く和也。
A「えーなんで、俺のじゃ信じてくれないのよ!!」
和也に覆いかぶさる雅紀。
智くんが両手を離して笑っている。
N「バカなあなたに言われるは、ちょっとね…」
ぐっと押し返す和也。
A「俺はバカじゃないし!カズは『か・わ・い・い』!」
大きな声を上げる雅紀。
ポカンとする和也。みるみる顔や耳が赤くなる。
(よし。機嫌が直って良かった)