第28章 ウイスキーで乾杯
二宮視点
蚊帳が五人を囲んだのを確認して、意識をリアルに戻す。
マー君は並べたグラスのお酒の量を見ていた。
(いっつも大まかなのに…こういう所はちゃんとしたがる…)
N「味見にだから…少ない方がいいよ」
小さい声で声をかける。
M「パイナップル香るなんとも珍しいパニオロ・ウイスキーなのですぅ」
S「情報ありがとう🎶」
(潤くんの説明も終わったな…)
隣で、マー君がマドラーを使ってお酒を混ぜていた。
(これで…完成なのかな?)
グラスを翔さんの方に動かして、マー君の反応を見る。
(何も言わないから、完成なんだね…)
智さんの前にグラスを置いた時
《あまり、力を使うと、しんどくなるぞ》
頻繁には使わない“声”で智さんが話しかけてきた。
(え!)
ビックリして智さんを見つめてしまった。
智さんはいつもよりちょっとだけ目が鋭い。
(蚊帳張ったの見られた……)
≪だまってください≫とだけ言う。
智さんが少し眉を下げて何か言いそうになったから、潤くんの方に逃げた。
(昼間も『無駄に力使うなよ』って言っていたよなぁ
失った力復活したの? いや、そんな事ない…)
〝体中血だらけの貴方と真っ青になって倒れている貴方〟を思い出して、体中が震える。
(絶対イヤだから…あんなのは見たくない…)
ふっと部屋の中にいるはずなのに、温かい風を感じる。
(そうか…
ここはハワイだ…『聖地』だから…
だから、あなたは…そっち側に近い… … …
て、事は…潤くんも気が付いてる?)
潤くんの前にグラスを置いて、反応を見る。
潤くんは翔さんにメモを見せているから、俺に何かしてこない。
(よし…気づいたのは、智さんだけだね…)
A「では、まずは、トワイスアップで乾杯!」
マー君が元気よく声を上げる。
(こういう時、マー君の能天気さが救い…)
「「「「乾杯」」」」
グラスを軽く上にあげて、口を付ける。
(甘い…でも、強い…もっと冷えてないと、飲みにくいなぁ)
「う~ん…水割りにしてくれません?」
マー君にお願いしてみた。
A「……了解」
ちょっと俺の顔を見つめたマー君はキッチンにダッシュで行く。
(いや…このグラスに氷入れてくれるだけ良いのに…
しかたないな…)