第16章 キミがいるから…僕も…
携帯の画面を見ていると、智くんが俺を見ていた。
「吉桜くんが来るって!」
携帯を指さす。
智くんが苦笑しているから、一緒に笑った。
(吉桜が来るまでに…用意しないとなぁ)
「洗濯ネット持ってる?」
智くんに聞く。
O「ないよ?」
少しだけ口が尖がる智くん。
(…ですよね…
さっきの鞄に入っていなかった…聞いた俺がバカだった)
O「翔くんは持ってるの?」
智くんが不思議そうに聞く。
「うん。旅の必需品でしょ?」
O「必要かな?」
「必要だよ!今日着た分を入れて、バスルームに置いていたら、着たのとじゃないのが分かるでしょ?
連泊だし、ハワイだし、いっぱい着替えるつもりで、数枚持ってきてるんだ
じゃ…(智くんの分)取ってくる…から…先に行ってて」
廊下に出て、自分の部屋に戻ろうと雅紀の部屋と逆に歩き出す。
O「待ってよ。一人で行きたくない。一緒に行こうよ。
洗濯物頼むんだし…ね?
翔くんのネットに入るなら、一緒のに入れてもいいし!」
智くんが着ていた服を持ってついてきた。
「それじゃ、どっちのか分かんなくなるよ?」
O「バカだな!それくらい分かるよ!」
口を尖らしながら言う智くん。
「ほんと?こないだも俺の服を自分のだと思って持って帰ったよね?」
O「あれは同じようなのが俺も持っていただけだよ!」
「はいはい。確かに似た様なの持ってますね」
数メートルの廊下がとても幸せな時間になる。
O「翔ちゃんの『母ちゃん道』進んだね」
唐突に智くんが笑いながら言う。
「かぁちゃんどう?何それ?」
O「嵐のお母さんを極めるみたいな事かな?」
ツボにはまったのか、肩が上下しながら智くんが俺を追い抜く。
「嵐のお母さんって。俺一応男ね。
もう変な日本語作らないでね。
あなたの発言は結構浸透するんですから…」
意見を言いながらその背中を追い掛ける。
O「俺よりずっと、翔ちゃんの方が発信力あるよ」
クルッと振り向く智くんがキリッとキメ顔で言う。
「そうじゃ…」
足が、体が、一瞬動かなくなった。
「…ま…いいけど…早くしないと!吉桜くんが来るね!」
恥ずかしくなって、智くんを追い抜いて、急ぎ足で部屋に向かう。
部屋の前にはもうすでに、吉桜くんが立っていた。