第16章 キミがいるから…僕も…
櫻井視点
二十歳を超えて、俺に群がる甘い匂いを纏った気持ち悪い人達が増えていった。
外向きの顔が厚くなる自分が嫌いなんだ
{ほんとぉ バカね! オオ馬鹿!}
「痛って」
桔梗の声と首のピンポイント痛で顔を上げる。
桔梗がふふっと笑っていた。
≪主に足蹴りする、精霊ってどうなのよ…≫
首を摩りながらユラユラ体を揺らして浮いている桔梗を見つめる。
{そう言うところも、今までの〝主〟とは違う…}
桔梗は俺の鼻にキスをする。
≪桔梗!!≫
{私からのおまじない♡
サトシの鞄。きちんと片づけてね}
そう言って桔梗の姿が消える。
(桔梗なりの慰めなのかな…)
鼻をちょっと触って笑った。
そして、勝手に中身を確認した鞄に綺麗に中身を詰める。
「智くん…」
自分の口からこぼれるのはシャワーを浴びている人の名前。
あの日すべてを捨ててでも『翔』でいようと決めた。
(だから…俺のエゴだけど、いつまでも、一緒にいさせて…)
物理的に近くにいたくて、バズルームの扉の前に立つ。
バスルームからシャワーの音が聞こえる。
(音が単調だな?浴びっぱなし?)
「智くん?のぼせてなーい?」
心配だから声をかけてみた。
O「もう出るよ!」
すぐ智くんが返事をくれた。
(シャワーの音させながら…出るって…無理な事を…)
声を聞いて、少し笑った。
(あなたはいつも、僕や、みんなを心配させないように
言う。
バレバレなのに…
俺は…あなたの役にたちたい。
あなたが、もう…一人で泣かないように
俺も強くなる。
自力で立って理不尽な事、全部吹き飛ばせる位強くなる)
鞄の中に出した荷物を戻し後、部屋を見回していると、バスルームが開いた。
出てきた智くんの顔を見て、さっきの違和感はなくなっていてホッとした。
O「翔くん?」
頬がいい感じに染まった智くんが俺を見る。
「なに?」
名前を呼ばれたから、近くに行く。
O「みんな…待たせてるの?」
困ったような顔している智くん。
「ううん。
俺もさっきまで自分の部屋にいたんだよ」
(あなたの笑顔を見続けれるなら、いつまでも待ちます)