第16章 キミがいるから…僕も…
櫻井視点
O「そうする」
智くんが着替えを取りにベッドに、近付く。
横を通る智くんの香り、ふらっとついて行きたくなる。
智くんがバスルームの前で立ち止って、振り向いた。
「待ってるから…」
その場しのぎで口走って、手を振ってごまかす。
O「ふふっ」
智くんが笑ってバスルームに入って行った。
(また…弟扱いされた…『待ってるから』って言った俺もオレか…
これじゃ、いつまでも、守れる立場になれないな…)
シャワーの音が聞こえてきた。
(そうだ。
密室に閉じ込めた今のうちに、危険物を確認しておこう)
勝手知ったメンバーのカバン。
大体何がどこにあるか知っている 15年も一緒に旅をしている。
智くんの鞄のなかに手を入れる。
(持ち歩くには不自然な硬いものはないね…)
手を引き出して、はぁと一息でる。
{王子が懸念するような物が入っていたら、飛行機は乗れません}
肩の上に座っている桔梗があきれた声を出す。
「はは、確かに!」
桔梗に返事をする。
ゾクッ
体中が警戒を告げるように鳥肌が立つ。
(こ、この感覚…)
忘れていたはずの感覚が蘇り体が震えだす。
「どこだ!どこから侵入してくる!」
目を見開いて、部屋中を見回す。
(智くんを守らなきゃ!!)
{王子…落ち着いて}
桔梗が俺に‘relaxation’をあてられる。
鳥肌は引いて行く、でも心の中なのザワザワはおさまらない。
{今回のチーム嵐は優秀よ。
それに、私が傍にいるなら手出ししないわ}
≪でも…≫
{私じゃ不安?}
≪そうじゃない。俺の無能さが悔しい≫
{王子は、不器用なだけ…無能じゃない}
≪“身内の力”を使う事しかできない俺は無能だよ≫
{“血筋”も立派な武器よ。またそんな事思ってるの?}
≪だって…俺の所為で…≫
{……ねぇ王子いつまで秘密にするの?}
≪巻き込みたくないんだ……≫
{バレてるわよ?}
≪うん。分かってる…
でも…俺はメンバーといる時間だけは、その時間だけは…
『翔』でいたいんだ
桔梗…ごめんよ 主(あるじ)がこんなんで…≫
項垂れる俺。