第16章 キミがいるから…僕も…
大野視点
{ほら…心配してきてくれたよ}
暖かい風が、おいらの髪を揺らす
{大好きな“人”のお迎えだよ}
風が導く。
「ぅん?」
導く方に体を向けると、サッシにもたれ掛かる“人”がいた。
「あ…翔くん」
その“人”は首を傾げている翔くんだった。
S「なにしてるのさ!みんなのトコ行くよ!」
すっと、手を差し出す翔くん。
「あ、うん…」
翔くんの手を掴む。
掴んだ翔くんの手がすごく、すごく温かい。
「あったかい」
自然と言葉が口からこぼれる。
(この手を握ると、不安が消えて…いくんだよな…)
S「いつから外にいたの?」
翔くんが心配そうな目でおいらを見ている。
(翔くんの目…黒くて綺麗だ…)
「ん、さっき…」
(いつからだろう?そんなに…前じゃないと思う…)
翔くんはおいらの手を擦りながら、部屋に入る。
S「こんなに冷たいのに!『さっき』は、ないでしょ?
ずっと?じゃないの?」
部屋に入るとずっと優しく手を擦っている翔くん。
「うーん…部屋に入って、着替えだして…あれ?着替えてない… 」
着ている服を確認して、部屋に入った辺りからの事を思い出す。
(あ、そういえば、
チラッと見えた外が綺麗だったから、
シャワー前に夜景見ようって、電気消したんだ…)
{それから、僕らと一緒だったね!}
声がちょっと離れた場所から聞こえる。
《翔くんにはキミの声は届かないんだね》
{色々、問題があるんだよ}
声が、困っている。
《ふふ 翔くんがブロックしてるんだね。しかたないなぁ》
急に翔くんがおいらの手を離す。
(離された…)
離された手をマジマジ見る。
S「シャワー?まだでしょ?行ってきなよ…」
翔くんがバスルームの方を指さす。
(そうか…手が温かくなったんだ…)
「そうする」
着替えを取りにベッドに、近付く。
翔くんの横を通ると翔くんが心配そうにおいらを見ている。
(相変わらず…心配性だね)
S「待ってるから」
ちょっと顔が赤い翔くんが遠慮がちに手をふる。
「ふふっ」
その姿が可愛くて笑った。