第16章 キミがいるから…僕も…
櫻井視点
O「…ぃ……」
ベランダで空を見上げてる智くんがいた。
「いた…良かった…」
ホッとして、サッシに寄りかかる。
目の前の智くんは…ただ、ただ空を見上げていた。
(智くん…どこを…何を…見ているの?)
いきなり背中に羽が生えて、飛び立ってしまいそうな雰囲気を纏っていた。
O「ぅん? あ…翔くん…」
智くんがゆっくり顔を向ける。
「なにしてるのさ!みんなのトコ行くよ!」
精一杯 穏やかに声をかける。
本心は飛び立たないように、抱き付きたい…
でも、そうしたら、逆に飛んでいきそう…で…怖い…
(とりあえず、確保だ…)
そっと、手を出す。
O「あ、うん…」
素直に手を出した智くん。
(よし、いいこ…だ…)
智くんの手を優しく掴む。
ビックリするくらい、手が冷たい
驚いて、智くんの顔を見ると「あったかい」嬉しそうに笑った。
(もしかして…)
「いつから外にいたの?」
急いで部屋に引き入れる。
O「ん、さっき…」
素直に智くんは部屋に入ってくれた。
部屋に入って智くんの様子を確認する。
(顔色は少し…青い…リハの疲れ程度かな?
服装の乱れはない…)
とりあえず、冷たくなった手を摩りながら
「こんなに冷たいのに…『さっき』はないでしょ?ずっと…じゃないの!」
問い詰めるつもりは、ないけど口調がそうなる。
O「うーん、部屋に入って、着替えだして…あれ?着替えてない…」
自分の服を確認して、首をかしげている智くん。
いつもの、ふわふわした、やさしい顔をしている。
(なんだろう…違和感がある…
命…といった大事ではない…けど…)
冷たくなった手を摩っているのに、なかなか暖かくならない。
(ぜんぜん温かくならない…
どうしたら、温かくなる…
体を暖める方法…)
ベッドが目に入った。
(あ…)
脳裏に浮かぶ卑猥な行動。
カキ消すように、智くんの手を離してしまった。
智くんが自分の手を見ている。
(あ…ごめんなさい…)喉まで出た言葉を飲み込んで、
「シャワー?まだでしょ?行ってきなよ」
バスルームの方を指さす。