第2章 出発前のゴタゴタ
日本時間17日の東京 二宮視点
(彼女!またソイツか…)
体が震えだした。
(だから、あんな受け答えだったのか…
ソイツにはチーフ逆らえない…みたいだし…
どんだけ“力”があるんだ!その“彼女”ってヤツ…)
“彼女”は、翔さんの事が大好きらしい。
で、俺たちは好きじゃない。絶対会ってくれない。
一度 翔さんに『会いたい』とお願いしたら、
ものすごく困った顔で『ダメだ』と首を振っただけで、
一切その話をしなくなった。
(やっとここまで、築いてきた関係を放すものか!壊すもんか!!!)
≪理解者!ベストじゃなくてもベターでいい…状況のシュウセイと行動予測、後…後…どうすれば…≫
{カズナリ!
落ちつけ…まずは目の前のマーを}
(マー!!)
リアル視点に戻すと、マーくんが泣いていた。
A「ニノ…俺、大ちゃん怒らしたのかな…」
30越えの大の男が立ったままシクシク泣きはじめる。
理解者が周りを忙しく周りを飛んでいる。
(足もと崩れそう…引き止めなきゃ…)
マー君の周りの空間が歪(ゆが)んで行く
「マーくん…」
手の甲を軽くぶつけて気持ちをこっちに向ける。
(俺に意識持ってきて!)
A「ぁズぅ~」
もう言葉になっていない。
「大丈夫。大丈夫だよ!」
体を抱き寄せ、背中を摩ってあげる。
『大丈夫』
その言葉は自分に言っているような気分だ。
いつも見上げないといけない顔が俺の肩にある。
横から見える目の中に今にも溢れそうな泪か溜まっている。
(落ち着いたかな…)
マーくんの周りを忙しく回っていた小さな光がゆっくりになって来た。
≪おまえ、頑張るなー≫
肺気胸が再発した時、専属として守護を頼んだ俺の理解者の一つ。
導きも助言もしない ただ、ずっとマー君の体調だけを守ってもらっている。
俺の方は具合がまちまちになったけど、あんな思いは、もうしたくないから、いいんです。
俺の“理解者”は単体じゃない複数体。
バラバラで動ける。
意識を集中すると会話だって出来る。
だから、呼び名を付けてた。
一人でいた時の、話し相手でもあった…