第10章 宿泊ホテルに到着
大野視点
部屋に入って、チーフの言われた通り、カード所定の場所に差し込んで、部屋の電気を付ける。
「はー…疲れたよぉ」
カバンと一緒にベッドに倒れ込む。
ゴロンと体制を変えると、目の前のテーブルに今回の嵐ロゴのメッセージカードがあった。
ハワイ15年目のアニバーサリーイベント。
(15年か…)
目を閉じ、覚えている映像を引っ張ってくる。
このイベント用に沢山の昔の映像や写真を見てきた。
そのたび、違和感があった。
笑っていない俺。笑えていない俺。
思い出す葛藤…
そして、誰にも相談できなかった、信じていた人の裏切り…
暗い気持ちになってたあの日…『智くん』と呼ぶ翔くんが夢に出てきた。
ふふっと思い出すたび笑ってしまう。
だって、その夢の翔くんは、初めて会った時のあの“かわいい翔くん”だったから…
「あー かわいかったなぁ…」
一人しかいないと分かっているから、独り言もすんなり言える。
今は、かわいくない時が多い。かっこいい時ばかりだ。
翔くん…初めてきみと 会ったのは
あの日 あの場所だったよね
大きな目をした ちいさい男の子がずっと後ろについて来る。
「なに?」って言ったら
「後ろにいます」って笑顔で答えた。
(なんだ?この子) 正直 へんな子と思ったよ、ごめんね
でも なんか うれしかった気がする。
15年前の事よりもその前の方が記憶にあって、なかなかトークに参加できない。
でも、こんなことメンバーに話したら、また、ヒヤカされる。
翔ちゃんだって困るしね…
「さ!シャワー浴びて、みんなの所行こう!
昨日の事もちゃんと二人に謝らないといけないし!」
着替えを出していると、窓の方で声がした。
?
気になって、窓まで行くと、ハワイ独特の淡いオレンジの夜景が見えた。
「おお!綺麗だ!」
窓を開けて、ベランダに出る。
「ハワイの夜景だ…」
部屋が明るいと、外の色がぼやけている気がした。
中に入って、カードを引き抜く。
電気が消えた。
「あ!」
カードを元に戻して、電気を復活させる。
「カード…取ったら、また言われる…あぶねー」
室内灯だけを消してベランダに出た。