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お日様が照れば雨も降る。

第10章 ボクゥ、キミ苦手やねん。/弱虫ペダル、御堂筋翔



「誰に聞くともなく耳に入った有名なお話です」

「要は噂やな。はぁ成る程。気ィ悪ゥ」

「イタリアにもベッロという言葉があります」

「何やソレ。どうでもいいわ」

「あなたはベロを出して走る。大変面白い」

「キミも大概失礼なコォやなぁ。面白いて何や」

「ミドースジくんにもひとつ宿題です」

「ボクゥ、要らん勉強はせん主義ぃ」

「イタリアのベッロはどういう意味を持つ言葉でしょう?」

「…うわぁ…。全ッ然興味ないィ」

「そう?私はあなたが山道を走る姿を見てベッロと思いました。ベロを出す程に真摯なあなたは尚ベッロでしょうと思います」

「何ソレ…。ベロベロキモォ。寒イボ立つわ」

「気になったら調べること。学習の第一歩ですね」

「それを手当たり次第やるとトンチンカンになる訳やな。キミみたく。よう分かった。気ィ付けるわ」

「トンチンカンでも頑張るのは良いことではない?」

「程度と場合によるわ。キミはもっと順序だてておベンキョせぇ」

「…トイレに行きたいか?困ったな…」

「…困ったのはキミや。何を聞き間違えとんの?いや、言わんでええから。口チャックや。黙り」

「了解」

「ホンマキミと話してると疲れるばっかりや。早いとこ正しい日本語ォ覚えて貰わんとボクの身ィが保たん」

「宿題頑張ります」

「そうしぃ。運転手さん、ボクゥここで降ります。えらいお世話さんでしたぁ」

「じゃあ私もここで…」

「降りん!キミはさっさと帰って宿題せぇ」

「だってミドースジくん…」

「ええから宿題頑張り。気ィ付けて帰りや」

「はい!ミドースジくんも気を付けて」

「はい、さいなら…止め!手伝わんでええて!反って危ない。邪魔ァ」

「はい。スイマセン!…また明日ね!」

「はい、また明日ぁ」

肩を庇いながらバイクを抱えてバスを降りる。乗降口の上に立ったコォが、また笑っとる。

「よぉ笑うコやなぁ、キミィ」

呆れて言うたのに、ますます嬉しそうな顔で笑われた。

うざぁ。今日は厄日や。

バスを見送る。窓から顔をつき出してまた明日って、危ないがな。ソレさっきも聞いたからもうええわ。

日が山の陰に入って辺りは薄暗い。夕日の名残が山の端っこに引っ掛かって、空の裾だけほんのり橙色。この季節この時間の空は嫌いやない。

バイクを引いて歩き出したら、ベロが気になって来た。
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