第8章 麗しのハンナ/ハイキュー、天童覚
「そりゃ大変だ。大丈夫か、天童」
半笑いになってるねェ、獅音。楽しそうじゃない?ムカつくなー。
「私はこれから工房だから、あなたたちが天童くんを送ってくれたら助かる」
「コーボー?」
反射的に聞き返したら、桜庭さんは口元に笑い皺を刻んで俺からバックを引き寄せた。
「工房。私の勉強の時間。じゃあお大事にね」
若利くんと獅音に軽く頭を下げて俺にもう一度、掠れた笑顔を向けて、桜庭さんはさらっと行ってしまった。何の引っ掛かりもなくあっさり。
あらら、ドライだねぇ。いいじゃんいいじゃん。何かモエる。うん?…萌える?それとも燃える?どっちでもいっか。
どっちでもいんだ。好きだから。
「わはーッ」
ペロッと内心滲んだ本音に思わず声が出る。
「おぉ!?何だよ天童、ビックリさせるな!」
ビクッと反応した獅音が可笑しくって笑っちゃったけど、笑い事じゃないかな、コレ。
「ねえ、若利くん」
じっと獅音と俺を見ていた若利くんが、黒目だけ動かして俺をロックオンする。何だ?て事ネ。
「桜庭さんて何しにドイツに行くの?」
「聞いてどうするんだ」
お、切り返しが早い。何もう、警戒しないでよ。俺はたださ…
「うん、桜庭さんが好きなんだよネ」
なのヨ。
「だから気になるワケ。教えてくんない?何でドイツに行くの、あの人」