第8章 麗しのハンナ/ハイキュー、天童覚
「ねぇねぇ若利くん、たまには道草食ってみない?」
部活終わり、着替え中のチームメイトを取り敢えず、誘ってみる。多分駄目だろねと思いながら。
若利くんは買い食いなんかとは縁がなさそうだもんねえ。ましてコンビニじゃあ、ちょっとネ。
何か和菓子屋でたっかい羊羹とか買い食いしてそうなのよ、若利くんは。老舗和菓子屋で羊羹買って、けど歩き食いみたいな。…ふ。ハハハ。変なの。でもそんな感じすんだよネー。勝手に思ってるだけだけどサ。面白いっしょ。そんな絶対王者って。
俺らは白鳥沢って高校のバレー部に所属してるワケだけど、これがなかなかのチームでサ。ま、アッサリ言っちゃうと、かなり強い。強いよー、俺らは。その中でも若利くんは別格、絶対王者の通り名も伊達じゃない超高校級の人なワケ。俺もなかなかのモンだけどサ、若利くんには敵う気がしない。てか、勝負しようと思わない。チームメイトだしね。ラッキーなコトに。
「道草って何だ?何処に寄るんだ」
きちんと畳んだユニフォームをドルガバのスポバに収めて、若利くんが生真面目な顔を向けて来る。
生真面目はいんだけどサ、ドルガバ部活で使うってどういうコトよ、ねえ、若利くん。笑っちゃうじゃない、ホントにもう。
大体帰ったら洗濯機に突っ込むんだから、わざわざ畳まなくていんじゃないの、そのユニフォーム?
面白い人だよネー。うん、面白い。
「コンビニで買い食いしちゃわないってお誘いなんだけど、どう?チョコアイスおごっちゃうよ?」
「それはお前の好物だろう」
「何何、ハヤシライス奢るんならオッケーてコト?」
「コンビニでハヤシライスを買ってどうする。持って帰って食べるのか?駄目だ。晩飯が食えなくなる」
「買い食いだよ、若利くん。買い食い。家に持って帰ったら買い食いになんないじゃない」
「コンビニでハヤシライスを…」
「いや、いっぺんハヤシライスから離れてみようか、若利くん。コンビニ、他にもいっぱい色んなモノ売ってるヨ?」
「それくらいわかってる。しかしだからと言って俺の食べたいものがあるとは限らないだろう」
「若利くんは何が食べたいワケ?」
「ハヤシラ…」
「話聞いてた?ハヤシライスからちょっと離れてみようね、若利くん」
「…ハッシュドビ…」