第5章 送り梅雨/ハイキュー、青根高伸
「送り梅雨・・・」
じいちゃんの受け売りを口に出して言うと、太田さんの手にキュッと力が入った。
「夏が来るね」
うん。
「・・・あのね」
うん。
「今度は私がお握り握るから、梅雨が明けたらどっか行こう?」
うん。
「いいの?」
「行こう」
今度は青根が握った手に力を入れた。
同じくらいの力でまた握り返される。
ベンチの真ん中で手を繋ぎ、少し雨足の弱まった表を眺めがら二人はお握りを頬張った。
今年の夏は、普通の夏じゃない。人を好きになるってそういう事らしい。
悪くない。全然悪くない。
雨が上がって梅雨が明けても、この花菖蒲はずっと枯れない。大事にしよう。
ずっと大事に。