第4章 花菖蒲のようなヒト/ハイキュー、青根高伸
太田さんがニコッと笑う。
ガツンと脳ミソが音をたてて、顔がますます赤くなる。
「お腹減ってんの?ねえ、じゃあさ、俺らと何か食い行かない?」
二口が友達に話しかけてる。
「うーん、でもねぇ、このコ、外食嫌いなんだよねえ。食べ物の趣味がオバアチャンなの」
「へえ。青根みてえ」
バンと背中をどやされたけど、太田さんがこっちを見て笑っているから、それでいっぱいで痛くも痒くもない。
また跳んでくれないかな。
スウスウと涼しげな太田さんの目を見返しながら、青根は朝の彼女を思い出した。
・・・・隣を歩いてくれないかな。
フとそう思ったら、どうしようもなくそうして欲しい気持ちが膨れ上がった。
そうして時々高く跳んで、楽しそうに笑ってくれたらいいな。
そしたら凄く楽しい。きっと凄く楽しい。
青根はカバンに手を突っ込んで、部活用に残しておいたお握りを取り出した。
「・・・・これ・・・・・」
「・・・・うん?」
差し出されたお握りの包みに、太田さんが顔を寄せてスンと鼻を鳴らした。
「お握り?良い匂い」
コクリと頷いた青根に太田さんはパッと顔を輝かせた。
「くれるの?」
食いしん坊らしい。
・・・・可愛い。
どうしよう。どうしようか。
俺はやっぱり、このヒトを好きになったみたいだ。