第1章 あったかいんだから/一松
ここだけの話。って言ってもどうせバラすんでしょ?
バラさない?
へえ・・・アンタ嘘つきだねえ・・・
俺、六つ子の四男なんだけど。
珍しい?あ、そう。何ならアンタもなってみる?自分と同じ顔が五つもあるんだよ。
・・・・まあ、滅入るね。
ドッペルゲンガーって自分にそっくりなのに会うと死ぬとかって馬鹿話があるじゃん?アレ、ホントバカだよな。そんな事言ってたら、僕たち毎日何回死んでるんだって話。
いいよ、別に。死んだって。俺なんてニートだし友達いないし暗いしつまんないしゴミだしクズだしね。
フ。
何その目。いいねえ。軽蔑してるでしょ?
兎に角、死ぬのはいいけど死因がアイツらみたいなのは真っ平ごめんだね。だったらヤられる前にヤる。
・・・だから何その目。そんな目で見て、俺を喜ばせてどうしようっての。いや怒ってないし。遠慮しないでどんどん見なよ・・・・
・・・・もっと蔑ずんで下さいよ・・・・。ふ。
俺には他に連むような相手がいる訳じゃないし、六つ子でいるのも慣れれば悪くない。
この妙な居心地の良さは、二十幾つにもなって皆が皆ニートだっていうのにも関係があるな。絶対ある。
ぬる~いお湯につかって、うたた寝してるみたいな。今にも溺れそうなんだけど、上がるのも嫌だっていうだる~い感じ。
まあ、だからって四六時中顔を突き合わせて一緒にいる訳じゃないし、いたい訳でもない。段々マジ皆消したくなって来るからね。適当に距離置いとかないと。
俺のプライベートはネコ。
・・・悪い?友達なんか要らないんだよ、俺は。
近所の公園の滑り台の下、ここは夕方になるとそのネコの溜まり場になる。天国だ。
ついでに最近得体の知れない自称近所の幼なじみが溜まってる。お陰でプライベートが台無しになった。
太田日与子、ヒヨだ。
知らねえよ。誰?アンタ?