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お日様が照れば雨も降る。

第12章 ワズキャン ーメイドインアビスー



終わりを受け容れるってさー、勇気がいるよね。

で、終わりにつきものなのが、集大成、山場。いわゆるクライマックスね。
これが大概盛り上がる。クライマックスのない話は詰まんないもんな。話にならないお話になっちゃう。はは。 

でもさ。クライマックスって終わりの始まりだよね。
現実にはさ。一番いいときってのは、蛇足のこんがらがり、出し殻の塊に頭から突っ込んでく前触れなんだよ。


何て、我ながらよくわかんないこと色々言っちゃったけどここからが本題でさ。

ねえ、見えもしない穴の底に何があるかなんて考えるだけナンセンスだと思わない?
何の話って、穴の底の話だよ。大穴。すっごい穴の底の話。
そう言ったでしょ。ちゃんと話聞いてるー?聞いてなくてもいいけどさー。僕も話したくて話してるだけだしね。何なら相手は君じゃなくても構わないんだー。ははは。嘘だよ。冗談。気にしないで?僕は嘘が下手だからさ。えー?どういう意味かって?さあ、僕にもよくわかんないやー。あんまり深いこと気にしないで、時々聞いてるふりしてくれたらいいからさー。
…頼むよ。

その底目指してた僕がナンセンスなんて言っちゃ元も子もないけどさ。あー…、いや。僕が…僕たちが目指してたのは底じゃないんだけどね。正確にはね。
で、まあその穴がじ、つ、に、潜りがいのある穴でさー。
それこそ登っちゃいけない山ありの下る一方の谷ありで、血湧き肉躍った挙げ句内臓はひっくり返るし、生えたり溶けたり歪んだり発毛したり?わーお。エキサイティングゥ。

でもこれがしんどいんだよー。
お話の山場なんざクソ食らえでさ。
ほんとしんどいのに止められなくてねー。止めたくなくてねー。なのに結局止まらざるを得なくなって、で、今僕たちは素敵なクライマックスのつけを払って蛇足と出し殻の掃き溜めで生きてるわけ!はははー。

でも意外と悪くないよ?毎日楽しいしね。

ホラ、掃き溜めに鶴って言うじゃない?そういうの、ありだよね?あるんだよね。うちの村にも。

他の連中がどう思ってるかは知らんがね。
まーいいんじゃない?ぱっと見それなりに不平不満なく暮らしてるみたいだし。
見たくないものを見ないようにしたくて、そんな風に見せてるだけかも知れないけどね。多分そうかな。気のいい連中だからさ。お互い気を遣い合っちゃってるのかも。

もちろん僕は全然そんなことないけどね!
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