第16章 気まずい
一人の孤独
寂しさが胸に沸き上がって来たのだ
そんな自分に
私は少し笑いながら
眠っている彼を起こさないように
静かに家を出た
自分の気持ちを
ちゃんと整理したくって
朝の空気を感じたくって
部屋を飛び出したのだ
私はどこに向かうわけでなく
自由に足を進めていた
私とすれ違う人は
朝から忙しそうに駅に向かって急いでいた
前までの私も
この急いでいる人たちと同じだった
朝早くの電車に乗る為に
小走りで向かっていた
いつも時計とにらめっこして・・・
私はおかしくなって
一人、笑いながら歩いていた
あの時の私から
大きく変わった
生活をしている自分に
本来ならあの夜に死んでいた自分が
一生懸命に働いている人たちと
違う時間を過ごしている
その現実を感じて
ため息とつきながら朝の空を見た
今日が始まる天気の薄い青い空
私は多くを
望んでいるだけなのかも知れない
今の生活だけでも最高なのに
彼がいつもと違っていると
不安になるのは
間違っているのかも知れない
私は自分に結論をだした
その時だった
目の前の道路向こうにコンビニを見付けた
自分のお腹が空いている事に気がつき
朝ご飯を買おうと道路を渡って
コンビニに向かったのだ
私は、自分の食べたいパンを買った
もちろん、彼の分も
コンビニの袋をぶら下げて
家に戻り
玄関の扉を何も考えないで開けると
トレーナー姿の彼が
玄関まで走って来たのだ