第14章 空
私の二日酔いは彼がくれた薬のおかげで
昼頃にはすっかり楽になり
動けるようになっていた
動けるようになったので
私は職安に来ていたのだ
彼にこの恩を返すには
ちゃんと職を見付ける事だと
思ったから
だから一日も早く
職を見付けて彼を喜ばそう思ったのだ
しかし
人生とはいくら頑張ろうと思っても
思うように上手くはいかない
私は今そんな中の
ど真ん中に居たのかも知れない
自分の考えているような職種はなく
条件も厳しかった
現実を思い知らされ
重い足取りで帰り道を歩いていると
ため息交じりの私の鞄から
スマホの着信音が響いた
慌てて見てみると
彼からのショートメールが
届いていたのだ
≪今日は、食事をして帰るから
遅くなると思うので
心配しないで先に寝てください≫
その文字を見て私は笑ってしまった
これって家政婦に送ってくる
文章かと考えると
微笑んでしまうのだ
どっちかと言うと
恋人への文章に見えて
仕方なかったからだ
この文章で
自分たちは一緒に暮らしていると
実感できるのが嬉しかったのだ
私は鼻歌まじりに
スマホを鞄に直し
頭の上にある青空に
私は目を向けると
ゆっくりと息を吐いた