第2章 悲劇
青年は芥川とくるみの方まで近づいてくると、おもむろに口を開いた。
「自己紹介をしよう。私は太宰。ポートマフィアの太宰治だ。」
太宰ーーー。
聞いたことがある。
最強にして最悪のマフィアの殺人鬼…。
「僕はー…」
芥川の言葉を遮るように太宰が言った。
「知っているよ。芥川くんだろう?君を待っていた」
「待っていた?」
怪訝そうに呟く芥川。
「うん。でも、そっちのお嬢さんは知らないなぁ。」
私が急いで自己紹介しようとすると、芥川が手をあげて制した。
「貴様には関係ない。こいつに関わるな。」
太宰は芥川を見、くるみを見た。
そして不敵な笑みを浮かべた。
「ふーん、なるほどねぇ。」
太宰はクスリと笑うと、ゆっくりと2人の方に向かって歩いた。
芥川とくるみの周りを、太宰がぐるぐると回り歩く。
芥川は、決して太宰から目をそらすことなく、鋭い目つきで視線を動かす。
しばらくして、芥川が口を開いた。
「何故…?」
「こいつらを殺したかって?」
太宰はにっこりと微笑んだ。
「簡単さ。君への手土産だよ」
「何?」
「君は、君の仲間を殺したこいつらに報復したかった」
「……」
「だからこそ此処にきた」
「………」
「そうだろう?芥川くん?」
全てを的確に当てていく太宰。
心の内を全て読まれた芥川は、ただただ驚き、困惑した。
「…何が云いたい?」
やっとのことで絞り出したその問いに、太宰は微笑した。
「そんなの決まっているだろう?」
太宰は、芥川の前で歩みを止めた。
「君をポートマフィアに勧誘したい」
…ポートマフィア?
それって、私の家族を殺した組織‼︎
「芥川さん…?」
私が不安そうに呟くと、芥川は私の肩に手をのせた。
「心配するな」
一言発した。