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【文豪ストレイドッグス】黒い世界に生きる少女

第5章 運命の瞬間


「それじゃくるみちゃん!!ここに留まるのも危ないし、帰ろうか!!」
太宰が明るく声をかけると、くるみははっとしたように顔を上げた。

「…あ!はい!そうですね…!」


太宰が何本か電話を入れると、直ぐに下層構成員が何人かやって来た。証拠隠滅の処理を行うという。
「くるみちゃんは先帰ってて。織田作と一緒に。」

少し低い声でそう言うと、太宰は処理に加わって行った。




「それにしても、織田作さんに何も無いようでよかったです」
帰りながらのくるみの言葉に織田作は僅かに微笑みをみせる。
「…ああ。ありがとう。」
「…はい。」


「実は、俺はよくこういうことが起こるんだ。」

長い沈黙の後、織田作が口を開く。

「…え?」
「俺は、かなり希少な異能力を持っていてな…しばしば敵組織に狙われる。」
「…大変、ですね」
「まぁな。もう…慣れたが。俺が狙われる度に太宰が来てくれるから、それだけが心苦しいな…」

そう言うと織田作は目を伏せた。

「…ごめんなさい。私、足手まといでしたよね。勝手に同行してしまって…ごめんなさい。」



織田作さんが心配でーー。そう言おうとして、やめた。
冷徹なマフィアの世界で、心配だの同情だの…軽い言葉は吐かない方が良いと、さすがの私も学んだからだ。


立ち止まり俯くくるみの肩に、織田作が軽く手を乗せた。
そしてそっと屈んで目線を合わせると、ゆっくりと口を開いた。

「…この世界に来て、俺を助けに来てくれたのは、おまえが2人目だ。しかもお前の場合、義務もなければ勝算もない。つまり…

心配してくれたんだろう?」

織田作は目を細めた。


「ありがとう。嬉しかった。」



くるみが微かに頷くと、織田作は立ち上がって歩き出した。
その後を追いかける。

帰り道、その他に会話はなかったが、なぜかくるみは織田作の言葉が聞こえた。



「この子は、この世界ではあまりに眩しい。何か、異能力の一つでもあればーー…」
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