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【文豪ストレイドッグス】黒い世界に生きる少女

第2章 悲劇


…何時間、経っただろうか。
不意に芥川が立ち上がった。

「許さぬ…!」

同じ思いだった。許せない。
私はひとつ頷いた。
そして、真っ直ぐに芥川の目を見つめた。
彼もしばらく私を見つめ続けていたが、やがてゆっくりと頷いた。
私たちの掟は、『仲間が傷つけられれば、他の全員で仇を討つ』こと。

「行くぞ」

私は走り出した芥川の後を追った。

くるみが後をついてくるのを感じながら、芥川は考えていた。
マフィアを相手に戦っては、どう考えても勝てるわけない。
僕の力など、到底マフィアには及ばぬ。
…そんな戦いにくるみを巻き込んでいいのか。
かといって、説得して納得する者でもないが。
なら復讐など無意味ではないのか?
いや、ここで泣き寝入りはしたくない。
この感情だけは、無視するわけにはいかぬ。
僕は死を畏れぬ。
僕はどうなろうと構わぬ。
だが、やつは?

「芥川さん!」

ハッと顔を上げると、目の前に人が立っていた。

「やぁ。…今夜は、良い夜だね」

細身の身体。黒い外套。身体中から覗く包帯。
顔には、何かに期待しているような、全てに退屈しているような、不思議な表情を浮かべていた。

「私はね、君たちを待っていたんだよ?」

芥川は青年に気圧され、たじろいだ。
青年の足下に、大切だった仲間の仇の敵が、無惨に事切れて転がっていたのだ。

「何だ、これはいったい…?」

男たちを武器なしで殺した青年は、そんなこと構わないといった様子で、佇んでいた。
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