第4章 マフィアでの生活
芥川side
「どうした。その程度か?」
そう云う太宰に、再び鋭い刃物を向ける。
凄まじい咆哮とともに襲いかかるのはよいが、彼の身体に触れるが否や、漆黒の刃は霧消してしまう。
無防備になった芥川の鳩尾を太宰が蹴り飛ばした。
「…立て!」
このやりとりは、もう何回目だろうか。
なぜ僕はこのようなことをしているのだろうか。
連続した異能の発動で体力も限界を迎えている。
蹴られ、叩きつけられた身体のあちこちは、動く度に悲鳴をあげている。
ゲホゲホと咳き込む芥川に太宰はゆっくりと近づいた。
冷ややかな目で見下ろす太宰を、芥川は睨みつけた。
「能力発動が遅い。いいかい、芥川くん。」
「敵は君が起きるのを待ったりしない。」
…尤もであった。
この男の云うことはいかにも正論だ。
いざという時、僕が起きる前に敵は僕を殺し、あやつのことをも巻き込むのであろう。
であるならば、このままでは、僕に存在価値はない。
…なんと無力なのであろうか。
これであやつを守るなど、よく宣っていたものである。
芥川は脚に力を入れると、なんとか立ち上がり、真っ直ぐに太宰を見つめた。
「…よし。もう一度だ。」