第4章 マフィアでの生活
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芥川の外套が一瞬で鋭い刃へと変貌する。
そして太宰を襲う。
刃が太宰の胴体を切り裂こうとするが、触れた刃は全て太宰に触れた瞬間、霧となって霧散する。
息を切らして着地した芥川に太宰が叫ぶ。
「その程度か!!」
「…!」
練習を始めてもう三時間になった。
薄暗い地下牢に、空気を切り裂くような爆音と、激しく叱咤する太宰の怒声、また、猛進する芥川の雄叫びのみが、永遠響いていた。
再び黒い刃が太宰を狙うが、難なくかわすと芥川の背後に回って芥川を突き飛ばす。
「立て!!」
その声が聞こえても芥川は微動だにしない。
太宰は一つため息をつくと、吐き出すように云った。
「今日はここまでにしようか」
「ところでくるみちゃん?君はここで何をするつもりなの?」
私は、何をしようか…
芥川と違って自分には異能力はない。
かと言って体術に優れているわけでも、特別に冴えているわけでもないだろう。
だけど。
自分のしたいことはわかっている。
芥川さんだって覚悟を決めていたじゃないか。
「私に出来ることは、おそらく少ないと思います。でも私は、これ以上何も失いたくない。みんながやりたいことが私のやりたいことで、私はそのサポートがしたい!!」
なんて前向きな女の子だろうか。
決して奢らず、控えめで、でも自分の意志はしっかり貫いて…
嗚呼、私には眩しすぎる。
彼女を引き入れた私はいずれ、この輝きを潰してしまうことになるのかもしれない。
心の中で燃えている火を、消してしまうのは私なのだろうか。
「君のそういうところ、ほんとにいいと思うよ。これからも、その気持ち、
忘れないでね」
「?はい…!」