第1章 今度は何事!?
蒼司の近侍である薬研藤四郎は、真面目なのだが少々融通が利かないきらいがある。以前はここまででもなかったのだが、近侍となって以降益々堅苦しさに拍車が掛かってしまったようだった。それがまるっきり悪いわけでも無いのだが…
今回の事態、彼を始めとした刀剣男士達にピリッとした緊張感が走ったようだった。
「三日月殿、あなたはつくづく苦労人ですな」
「なに、年寄りは世話を焼くのが少しばかり好きなだけだ」
短く言葉を交わし、小狐丸は薬研達を追って部屋をあとにした。
残された三日月宗近と蒼司は、暫くお互いの息遣いだけを耳にする。先に沈黙を破った蒼司は、絞るような声で三日月宗近に問うた。
「遠征から帰った彼等に、なんて言えば良いんだろうね」
「主の言うことは絶対だ。何も危惧することはない」
「…そうか」
いつもと変わらぬ口調でそう言われ、どこか安堵したような表情へ変わる。蒼司は振り向くと、先程までの弱々しさはどこへやら。張りのある声で三日月宗近へ指示を下した。
それを受けた彼は、緩んだ篭手の紐をぎゅっと結び直してゆるりと答える。
「あい、わかった」
風が畳の匂いを巻き上げる。
軋んだ歯車が、再び動き出そうとしていた。
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