第1章 今度は何事!?
「カノン!!おい相棒がピンチなのに何で助けない!」
「僕だって避けるのに必死なんだけど!?」
頭に血が上ってすっかり忘れていた、カノンも襲われているんだった。気がついてチッと舌打ちをすると、間合いを取るために足に力を込めて後方へ飛び退こうとした。
「!?」
今回二回目の不幸というべきか。またしても、今度は大きめの岩が後ろにあったようで、足を引っ掛けて後ろへグラリと倒れてしまった。もんどり背中を打って、呼吸が苦しくなる。動けない。
(まずいー!)
気がついた時にはもう遅かった。眼前には刀を振りかぶる相手の姿。獲物を捉えたかのようなギラギラした目に捕らえられて頭が真っ白になる。
ー俺を呼んで!一言でいいんだ!呼んでくれたら、あんたを、叶弥を守れるんだ!
(呼ぶって、誰を)
ー俺を、『加州清光』を、喚んで!
(かしゅ、う)
スローモーションで流れる世界で、やけにその声ははっきり聞こえた。幻聴かもしれない、色々な世界を渡り歩いてきた副作用だったりするかもしれない。だけど、喚ばないといけない気がした。
そう判断した私は、僅かな空気を吸い込んで力いっぱい叫んだ。
「加州清光!顕現して私を助けろ!!」
目の前に掲げたその刀が一瞬光を放つと、ブワッと風が舞い思わず目を閉じてしまった。キィンと刃を交えた音にハッとして目を開くと、そこには黒いコートを纏った背中があった。
「よっ、と。…俺は加州清光。扱いづらいけど、性能はいい感じってね」
少しだけ振り向いた加州清光と名乗る少年はいたずらっぽく笑うと、敵と対峙して挑発するように手招きした。
「俺の主に手を出すなんていい度胸してるね。お前みたいなブサイク、ここから先は指一本触れさせないよ!」
そこからは目を見張るような快進撃だった。
ヒラリヒラリと刃を躱し、いたぶる様に、しかし確実に敵の体力を削っていっているようだった。
「…すげ…」
心なしかワクワクする。
凄い、この加州清光って奴は。
リーチの差なんてものともしない、戦い方を分かっている動きなのだ。彼の得意なのだろう、素早く躱してスキをつき、懐へ飛び込んではダメージを与えていっている。
ボウっと眺めている背後で、相棒の声が届く。
「叶弥!そっちに行ったよ!」
「はぁ!?なにやってんの!!」