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アサギリソウ

第1章 今度は何事!?


足りない頭を使おうとしたのが悪かったのか、足元の大きめの石に気が付かなかった。
見事に

「っどおおおお!?」

顔面から盛大に地面に激突する。
そのまま勢いに逆らわずに、ザザザと数メートル転がってようやく止まった。

「叶弥!!」

先を走っていたカノンが私を振り返って後方を凝視した。例の異形の者が迫ってきているのだろう。
一応一通りの護身術くらいなら使えるが、アレははっきりいって護身術云々が通用する相手ではない。手に携えた日本刀のような物もチラついていたからだ。
痛む全身の土埃を払いながら、仕方が無いか、と立ち上がろうと手を付いた。その時だった。




ーあんた、俺の声が聞こえるよな?

「…は?」

ーあんただよ、擦り傷だらけのその間抜けヅラ。…俺を手に取ってよ、多分俺を使いこなせる気がするんだよね。…死にたくないんでしょ?

「どっから声が…って、これか!?まさかこれが!?」

ーそーそ、目の前の赤くてかわいい刀。それが俺だよ。検非違使に追っかけられてるんでしょ?丸腰みたいだし。俺を呼んでよ、あんたの力になれると思うんだ。

幾度も世界を渡ってきたせいか、はっきりいって刀が喋ろうがなんだろうが、それは大したことじゃない。
物に魂が宿るなんて普通のこと。この刀も付喪神の類なんだろう。問題はそこじゃない。

「…誰が間抜けヅラだ、あぁ?」

出会って(?)数秒で間抜けヅラなどと吠えられた事なんてなくて、少しイラッとしながらその刀を乱暴に掴みあげる。

「いーよ、使ってやるよ、目いっぱいな!!」

ーあっ、ちょっとまっー

静止の声も聞かず、刀を抜いて異形の者、検非違使の前に構えて出た。

「いいかっ、私は泣く子も黙る大神叶弥だ!吉備砂糖だか吉備団子だか知らないけど、お前らみたいなのに追いかけられるいわれは断じてない!!おかげで私はコケた上に訳の分からん刀にまで馬鹿にされてしまって、非常に頭に来ている!よって成敗してくれる!!」

無駄に長い口上を言い終わるや否や、手にした刀を適当に構えて振りかぶった。

「でぇやぁぁぁあ!!」

型なんて分からないし無茶苦茶だ。かすりもしない。オマケに相手の方がリーチが長いらしく、刃先が頬を僅かに裂いた。ピリッとくる痛みに顔を歪めると、近くにいるであろう相棒を罵りながら尚も振りかぶる。
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