第5章 力の使い所と彼らとの距離
「目覚めさせるったってどうやりゃ良いんだ」
「その感覚は君しかわからないんじゃないのかな?」
「うーん…」
首を捻って加州清光を顕現させた時のことを思い出してみる。しかし、なにぶんヤケクソだったのではっきりしないのだった。
「まあやってみればわかるんじゃないのかな?さ、そこの資材を適当に彼らに渡して」
「適当ったって…おい蒼司」
「うん、ちょっと意地悪だったかな?そうだね…資材の量に応じて出来上がる刀種もある程度決まってるから。君が顕現させたい刀は?」
刀種がまずピンと来ない叶弥はチラリと加州清光を見遣る。彼自身は打刀だと告げると、叶弥は腰に下げた彼の本体をじっと見つめた。
加州清光がいた時代、『刀』とは一般に打刀を指したのだという。太刀程の長さだと大振りで取り回しが悪い、かといって脇差だとリーチが足りない。この辺りは使い手の間合いや技量も関係しているのだろうが、専ら帯刀されていたのは使いやすい打刀だということだ。
(だったら打刀が無難かな)
さっぱり分からないことは、一般的と言われる事に従うのが定石というもの。叶弥自身が刀を振るうわけではないが、どうせなら加州清光のような刀剣男士が来たらいいなと、そんな考えだけで結論を出したのだった。
「わかった。じゃあ配合は…こうだね」
蒼司が手際よく資材を小人達に渡してゆく。彼等のその小さな身体のどこにそれを抱える力があるんだと、叶弥は素直に感心して頷いた。
「うんうん、打刀ができるまで時間があるね。どうかな、もう一つ位はやってみるかい?」
なんだか蒼司のテンションが高い。変なやつだと眉を顰めたが、まあいいかと了承する。戦力拡充したいのなら一つでも多く鍛刀したいのだろう。叶弥は違和感を押し込めどうするか思案した。
「なあ、鍛刀ってこの台がある場所でするんだろ?何回も来るのとか面倒だから、全部一気にやろうよ」
「資材があるからといってもタダじゃないんだぞ。アンタには遠慮ってものがないのか」
「まあまあ薬研。資材供給はゆくゆくなんとかなるだろう、今は仕方が無いさ。戦力拡充において最初は数が勝負だ。練度をあげるにしても、少数ではそれも中々ままならないだろう?」
「大将、コイツに甘すぎだ。何処の馬の骨とも知れん奴なのに」
苦々しげに薬研藤四郎はそう毒吐く。