第5章 力の使い所と彼らとの距離
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熱い。
叶弥が一言だけそう発すると、鍛刀部屋へ集まった刀剣男士━━石切丸、今剣、薬研藤四郎、獅子王、岩融、一期一振━━六振りと蒼司が、その顔を揃ってうかがった。
しかめっ面でじんわり汗を滲ませている。確かに熱くはあるのだが。
「叶弥さんって、もしかしなくてもあつがりですかー?」
「四季の中で夏が一番嫌いだ。汗をかくし気持ち悪いし、いいことなんてない」
頭上から今剣がそんなことないですよー、なつはいいこともたくさんありますよー、なんて声が降りかかるが、叶弥は目の前にある炎を忌々しげに睨んでいた。
今剣は現在、岩融に担がれている。
隣にいる彼をふと見上げると、快活な笑い声が響いた。
「お前が審神者もどきの叶弥というやつか?俺は岩融という!今剣から度々話は聞いていたぞ!よろしくな!」
「い、いわ、いわさん?よろしく…」
もどきってなんだ、もどきって。審神者じゃないしもどきでもないぞと思ったが、熱くて反論する気も起きない。
鍛刀部屋とはいえ、鍛治をする場なのでどちらかというと『工房』や『町工場』といった印象だ。母屋から離れた場所にあるのだが、そこにあるほかの部屋よりもひと回りもふた回りも大きかった。
「隠れていないで出ておいで。彼らは見慣れないかも知れないが、私の客人だから危険はないよ」
蒼司がつい、と手を振りながらそういうと、そこかしこの影から小人が顔をのぞかせた。叶弥は少し驚いた様子だが、一度目を見開いた後頬を緩めてよろしく、と挨拶をする。
「妖怪?妖精?小人?なんでもいいか、小さくてかわいい」
「叶弥はちいさいのがすきなんですかー?」
「んん、なんでかな、見てるとムズムズしてくるんだよ、構いたくなる。いまつるも例外じゃないよ」
「ほんとうですかー?わぁい!叶弥、かまってください!」
本当に構いだそうとした叶弥の頭を相棒が小突き、目的を思い出してバツが悪そうに頭を掻いたのだった。
「さて。勘がいい君だからもうわかってるとは思うんだけど…“彼ら”が刀を鍛刀する役目を担っているんだ。材料を渡して出来上がった刀を目覚めさせるのが、ここでの審神者の役目、というわけだね」