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アサギリソウ

第5章 力の使い所と彼らとの距離


「…は?」

それは唐突だった。いや、頭の片隅で可能性は考えなくもなかったのだが、改めてそう言われると間抜けな声しか出なかった。

「鍛刀してみろ、って?…いやいやいやいや、私はハニワじゃねーし」
「審神者!叶弥、いい加減覚えなよ…」

朝食をとる最中、失礼するよと現れた蒼司の口から告げられたのは、まさかの戦力拡充の為の誘いだった。
ニコニコと笑みを湛えたままの彼の横には、近侍の薬研藤四郎と何故か三日月宗近が控えていた。

「加州、私はお前だけで手一杯だし、何より戦場に出したことすらないだろ?戦えんのか加州」
「なーに言ってんの。叶弥が俺を顕現させた時点で、それなりに練度高めなんだけど。俺ちゃんと戦ってたでしょ?」
「マジか、既に武器に+付いてるお得なの拾っちゃってたのか」

そいつはすげぇと嬉々として加州清光を褒めると、嬉しそうに、それはものすごく嬉しそうに笑っている。
薬研藤四郎の咳払いで二人の世界から引き戻されると、叶弥は蒼司を見やって口を開いた。

「刀ってあれだ、熱した鉄をハンマーでぶっ叩いてやるヤツだろ?やったことないんだけど」
「ああ、まあそれもだけど、私達審神者の言う鍛刀はちょっと特殊でね。前にも話した通り、審神者には物に宿る想いや心を目覚めさせ、自ら戦う力を与えて振るわせる力があるんだ。ただ武器を作ればいいって話じゃない。励起させる異能の力がいる。それを持つのが審神者って訳なんだよ」
「…益々無理な気しかしないんだけど」

げんなりと、明らかにやる気のない声色の叶弥を薬研藤四郎は呆れたように見つめていた。ため息を一つ付いて、正座のままずり、と少し前へ出る。

「それが出来るはずだと言うのが、大将や俺っち達の見解だ。現に加州清光がこうして存在している訳だしな」
「そうだな。叶弥からは俺たちの主と似て非なる力を感じる。これは石切丸も言っておったが、恐らく神気だろう…それも膨大な。有り余るそれをそのまま放置するのも勿体無いだろう?」

神気。カノンが叶弥に分け与えているエネルギーの事だろう。しかしこれはあくまでも“分けられた”ものに過ぎないのだ。それを使えば新たな神気を供給させるためにカノンを疲弊させてしまう。そう考えた叶弥は素直に頷くことは出来なかった。
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