第2章 居場所
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俺の主は、ちょっと変わったヤツだ。
戦場に投げ出されて暫く、そいつは急に現れた。
真っ黒な髪に前髪のひと房が銀色に輝いていて、目の色が少し赤みがかっている。どことなく親近感を覚えたんだ。俺も黒髪に赤目だからかな?
連れらしいデカイ男の方はひょろ長くて、最初は男って分からなかったな。綺麗な顔をしてたし、癪だけど。
とにかく変な奴らなんだ。敵に追いかけられててさ、すっげえ顔して全力で走ってんの。しかも俺の目の前で派手にすっ転んでさ、顔面まで傷だらけになってて、ちょっと笑っちゃったな。
そして、そいつが近づいてきた時に感じたんだ。
なんか、違うなって。
人間なのに、人間じゃない。かといって俺みたいな付喪神の感じもしない。でも、漂う『何か』に気づいてつい話しかけちゃったんだ。
俺を顕現出来るんじゃないかって思ったんだけどね、俺をつかんで振り回しはじめたからもう面白くってさ。あ、へっぴり腰で名乗り口上始めた時には開いた口が塞がらなかったね。
あーごめんごめん、こんな話を聞きたいんじゃなかったよね。
つまるところ、野良だった俺があいつを、叶弥を主にしたいなって思ったのは一瞬だったんだ。
感じた力に惹かれたのもあるんだけど、単純に面白くて知りたいって思ってさ。直感ってやつ?
じゃなきゃ自分から普通話しかけないだろ?
名前?
連れのカノンが言ってたけど、叶弥は規格外だから真名を明かしても問題ないんだってさ。何が規格外なんだか分からないけど。
つーまーり、俺が叶弥の初期刀で近侍な訳だよ。審神者かどうかは問題じゃない。実際こうして俺が顕現出来てるわけだし、それが事実でしょ?
あんた達が何を問題視してるか知らないけどさ、危害を加えたりしたことなんてないだろ?それに俺にとっては大事な主なんだよ。
迷子で方向音痴で記憶力が良くない、俺のだーいじな主。わかってる?
だーかーら、叶弥に何かしたら俺、あんた達を切っちゃうからね?
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「はーい、取り調べ終了ね!俺叶弥んとこ行ってくる」
「あっ!まだ話は終わってな」
「いいよ薬研、これくらいにしよう。おそらくあれ以上聞いたところで何も出てこないだろうし」
加州清光を追いかけようとした薬研を、蒼司はやんわりと制止する。