第14章 重ならない想い/武田信玄
「(そろそろ限界だな……)
今日の修行はおしまいだ」
「え……?」
秘部を弄るように触れていた指が止まり、信玄は凛から離れた。
「……どうしてですか?」
「きみには忍びは無理だ。あきらめた方がいい」
「そんな……」
信玄からの駄目出しに涙が溢れて止まらない。
想いを伝える事の出来ない凛にとって忍びとして信玄の役にたって生きることしか選択肢は無いのだから。
「私、頑張りますからっ」
信玄の広い背中に縋り付き涙をこぼす凛。
背中に凛のぬくもりを感じている信玄の顔は何かに耐えるように歪んでいた。
そう、信玄は自分の気持ちを押し殺し耐えていたのである。
信玄は知っていた
凛の気持ちが自分に向いているのを__
そして凛の気持ちに応えてしまいたい自分がいる事も
でも、信玄には凛の想いに応える事ができない。
修行と称して凛に触れていた信玄
冷静に触れてなんかいられなかった。
愛おしい女が腕の中にいる
信玄のすべてで愛したい
ひとつに重なり合いたい
肌に触れるたびに「愛しています」と言われているような気がして心が踊ってしまう。
「(俺がガキだったら何も考えずに凛を抱いていたんだろうな)」
しかし、大人である信玄には無責任に凛を抱く事は出来ない。
背中にある温もりを抱きしめようと指を動かすも、爪が食い込むほど握りしめ耐えるしかない。