第28章 うたかたの夢/上杉謙信
「謙信様!!……謙信様!!」
「佐助……耳元で怒鳴るな。聞こえている」
「まったく。戦場でうたた寝なんかしないで下さい」
「敵が仕掛けて来ないから退屈でな」
木の根元でうたた寝をしていたようだな。
「信長の軍勢に動きがあったみたいですよ」
「そうか……では、前線に出るとするか。信長……!俺を退屈させるなよ」
「相変わらず戦好きですね」
呆れたような佐助に背をむけ、馬に跨がる。
「この俺に生きているという実感を感じさせてもらうぞ」
なあ、凛。
お前のいないこの時代はつまらん。
いくら、戦に興じようと俺の心を満たす事は出来ぬ。
俺の心を満たす事が出来るのはお前だけだ。
凛との約束は守ってやる。
俺は退屈でつまらんこの時代を生き抜く__
俺は必ずお前を見つける。
それまでは暫しの別れだ___
*謙信 終*