第9章 糸電話再び/猿飛佐助
「声優なんだから喘ぎ声とか素で出来るよね?」
「……台本があるから出来るの!!」
まったく、もう!
仕事だから喘ぎ声でも吐息でもやれるんだよ
素で出来るわけないじゃない
「はい、これ」
「……なに?」
「そう思って台本を用意しておいたから」
どや顔中の佐助くんを見つめる私の瞳が凍りつきそうだよ
佐助くんって変に用意周到というか、何ていうか……
呆れて言葉も出なくなりそう
(彼女、やめようかな?)
「声のイメージとしてはおとなしい感じで欲しい」
「……」
「ちょっとだけロリもあると尚いいな」
「…………」
「凛さん、聞いてる?」
「あのね……」
好き勝手にいう佐助くんにこめかみがピクピクしてるんですけど?
「凛さんはプロだろ?プロなら瞬時にやってみせるのがプロじゃないのかい?」
「ぐっ……」
痛いとこをついてくるじゃないの!
私だってプロよ!
国民的アニメのヒロインをやっているわよ!!
私にだって声優としてのプライドだってある。
そこまで言われて黙ってられないわ
「わかった。やるよ__しっかり佐助くんを抜かせてあげる!!」
「流石、俺の彼女だけはある。凛さんなら絶対にそう言ってくれると思った」
満足そうに笑う佐助くんを横目で見ながら、私は台本に目を通していく。
(なんか上手く乗せられたような気がするんだけど)