第8章 甘いのを頂戴/徳川家康
「……ほら、早く食べなよ」
「……え?」
「ほらっ」
凛の口元にぐっと芋を押し付けると驚いたように瞳を見開いている。
甘やかされたいんでしょ?
そんなに羨ましいんなら甘やかせてあげるよ
俺だって本当は凛を甘やかしたかったんだから。
天の邪鬼な俺はなかなか行動に移す事が出来なかったけど、凛が望むなら叶えてあげる。
但し、どうなっても責任は取らないから
ちゃんと覚悟をして
それにしても、さっきからにやにやと笑いながら俺たちを見ている政宗さんの視線が気になってしまう
(正直、ウザイ)
絶対に後でからかわられる__
そう思うと気分が萎えてくるけど、照れながらも一生懸命に口を動かす凛が可愛いくて箸をとめることが出来ない。
「美味しい?」
「……うん」
「はい、お茶を飲んで」
「……うん」
「凛……口元」
「ん?」
「……汚れてる」
「あ……」
お手拭きに手を伸ばす凛より先に親指で口元を拭う。
さすがにこれはやりすぎたか?
まるで閨にいる時と同じ
抱いている時に見せる惚けた顔
……これ以上は無理
凛の特別な顔を他の奴らになんか見せたくない。
「凛、行くよ」
「え?」
強引に腕を掴み広間を後にする
(凛があまりにも可愛い顔するから我慢の限界だよ)